岐阜の税理士 鷲見のつぶやき

経営や生活にかかる税務の話題を中心に、その時々 自分の気になった話題を取り上げます。 わかりやすくを心がけますので 専門家の方から見れば ? と思われる個所があるかもしれませんがご容赦を。 ( 書いていることは その時の法令に従ってますし すべて私見です。)

相続

相続財産 土地建物は必ず登記!

 平成28年4月10日の日本経済新聞に 『迷子の土地 全国で拡大』というコラムがあります。
土地の持ち主や境界が不明となっているため有効活用が滞る事例が各地で相次いでいるのだそうです。
 
 東日本大震災の高台移転に関しても同じような内容の報道を目にしました。
国としても行政が土地の有効活用がこういった土地が存在することにより滞ることがないように『不明裁決申請に係る権利者調査のガイドライン』を出しています。

 親が山林を所有していても 子供はこのあたりの山ということしか知らないという話も多く聞きます。 山林は共有が多く 境界線も「この岩を目印」みたいな共通認識のみでされていることも多いようです。

 山林から生活の糧を得るということも最近はないのでしょうから『山林の所有権』は放置され、相続がおきても所有権の移転登記はしない人がいるようです。 山林のみならず 親の所有していた土地についても 親元を離れたところに生活基盤を確立している子供にとっては同様で 所有権の移転登記をしないでそのままにしているものも増えているそうです。
 相続が2代目、3代目と続けば所有権の相続人を探す労力は大変のものになることは想像に難くありません。

 ご自身が今住んでみえる土地家屋についてもしかり。

 名義人がもしすでに亡くなってみえる方でしたら 早々に名義人を変更してください。
 「名義を変えるのが面倒」だからとか、「ほかの相続人は自分がこの家に住むことに何の不平不満もなく認めているから名義を変える必要はない。」と思ってみえる方。 今は良くても明日はわかりません。

 正しい名義に変えること。 これは 相続 を 争族 としないための手間の一つです。
 

事業承継それとも廃業 (@_@;) 

現に事業を行ってみえる方の心配事の一つに事業承継があるのではないでしょうか。
「親族に継がせたいが継ぐ気はあるのだろうか。」「こいつに後を任せて大丈夫なんだろうか。」・・
やはり悩みは親族への承継についてが多いのでしょうか。

小規模企業白書に『現経営者の事業承継の経験』の統計があります。(1-1-54図)


1-1-54
親族以外の経営者から事業を承継したという回答は2.3%しかありません。
多くの方が想像されるよう小規模事業者の大半は親族からの事業承継となっています。

では、現経営者の事業承継に関する思いはどのようになっているのでしょうか。
2012年11月中小企業庁委託調査『中小企業の事業承継に関する調査に係る委託事業報告書』(株式会社野村総合研究所 によると次のようになっています。(以下の数値も2012年11月中小企業庁委託調査『中小企業の事業承継に関する調査に係る委託事業報告書』(株式会社野村総合研究所によります。)

引退
出典:2012年11月中小企業庁委託調査『中小企業の事業承継に関する調査に係る委託事業報告書』(株式会社野村総合研究所データより作成

68%の方が事業を継続したいと答えてみえます。
また事業をやめたいと答えてみえる方の過半数の方が後継者難を理由とされています。
事業をやめたい理由
出典:2012年11月中小企業庁委託調査『中小企業の事業承継に関する調査に係る委託事業報告書』(株式会社野村総合研究所データより作成

 事業をやめたいという方の年齢は高齢の方の割合が多い訳でなく各年代がほぼ同じ割合です。
 事業を引き継いでくれる人材がいれば事業は続けたいということなのでしょうか。

 後継者を決定する際に重視する点(複数回答)では 「親族であること」が48.7%ありますが 「自社の事業・業界に精通していること。」は49.2%あり 他にも 「リーダシップが優れていること。」「営業力・交渉力が高いこと。」など経営能力そのものが後継者選びのポイントとなっています。

 理想は 親族 かつ 高い経営能力 なのでしょう。確かに、事業を継続させたい理由(複数回答)では「親族・後継者のため。」が40.7%を占めています。しかし事業を継続させたい理由のダントツのトップは「従業員の生活を守るため。」それに次いで「取り引き先への供給責任を果たすため。」「地域・社会に貢献しているため。」ともあります。

 事業の社会貢献が理由であるなら 別段後継者は親族である必要はないように思います。

 当然に 引退後の生活は考慮した承継が必要です。
 そのうえで 親族以外への承継。 事業譲渡など考えられてはどうでしょうか。


公示地価で土地の値段ってわかるの (?_?)

2016年1月1日時点の全国の公示地価が発表されました。

全国の2万5270地点の地価です。 2015年は2万3380地点だったので対象の標準地は少し増えました。
みなさんの住んでみえる土地は上がりましたか?

公的な土地価格として他には  『 基準地価 』 『 路線価 』 『 固定資産税評価額 』等があります。

『 基準地価 』は 都道府県が調査の主体となり昭和50年以降毎年実施されています。 (公示地価の調査主体は国です。) 公示地価と基準地価は不動産鑑定士による更地とした場合の評価額に基づき価格が決定されます。

『 路線価 』は 相続財産、贈与財産である土地の評価に用います。 
 公示地価、基準地価が土地そのものの評価額であるのに対し 文字通り 路線に対して 1㎡当たりの単価を表したもので その路線に面した土地の評価は その路線価をベースとして 評価財産基本通達の規定に従って 路線に接している距離や奥行き、土地の形状などを考慮して求めます。

『 固定資産税評価額 』は 固定資産税路線価に基づき一つ一つの土地について決められます。

自分が土地を売買する時にはどれを参考にすればいいのでしょうか。

公示価格の基準点が近くになければ全く参考にならないでしょうし、近くに基準点があったからと言ってその地価がそのまま使えるわけでもないでしょう。

路線価から簡単に評価額を求めることとは難しいでしょう。

もともと 土地価額は売り主と買主の思いにより大きく変わるものではないでしょうか。

需要と供給の関係がはっきり表れるものですよね。
Aさんにとっては高く思える価額でも その土地がどうしてもほしいBさんにとっては安い価額かもしれません。

路線価にしても 公示価格にしても その評価の基準が一定ならば 土地の売買価額そのものとは乖離していても近隣の土地との比較に使うにはいいかもしれません。

相続に係る土地の評価で、規定に従った評価額に相続人の方が納得されないことも多々あります。
ご自分の思いと画一的な評価方法から求める価額に開きがあることは十分考えられることです。
使い勝手とか周辺を含めた評価対象の土地の状況を考慮した評価方法により評価することはするのですが。

定価、参考上代がある製品でも適正価格がいくらなのかわからないのですから 土地についてはなおさらですよね。

相続した土地家屋の譲渡所得から3,000万控除!

  平成28年度の税制改正に「 空き家にかかる譲渡所得の特別控除の特例 」が創設されます。

 相続で取得した一定の家屋および土地等を譲渡した場合に その譲渡所得の金額について居住用の譲渡所得の特例による3,000万円の特別控除が適用できるというものです。

 空き家については 総務省の統計によりますと 25年10月時点で全国の空き家の総数は約820万戸あり 適切な管理が行われていないため倒壊しそうだったりするという、周辺の生活環境に悪影響を及ぼすであろう空き家は毎年約6.4万戸増加しているそうです。(H25 住宅土地統計調査)

 H26.11.27に 「 空き家等対策の推進に関する特別措置法 」が公布され、施行後から自治体ごとに空き家を調査、周辺の生活環境に悪影響を及ぼしている空き家を「特定空き家」と認定。所有者に管理をするよう、「指導」を行うそうです。
 みなさんも空き家を所有して見える方には 自治体から管理状況の問い合わせなどがあったのではありませんか。

 目的とするところは H23年に閣議決定された住生活基本計画にある 「 空き家の再生および除却や情報提供等により空き家の有効活用等を促進する。」ことです。

 適切な管理を促すために 固定資産税の居住用家屋の敷地に係る優遇措置をなくし税額を6倍にするといった施策を見聞きされた方も多いのではないでしょうか。

 居住用家屋が空き家となる契機の多くは相続によるものだそうです。
 そこで 空き家の発生を抑制するという観点から今回の特例創設となりました。

 そこで要件です。
  ① 昭和56年5月31日以前に建設 ( マンション等の区分所有建物を除く。)
  ② 対象の譲渡
        1) 被相続人の居住用家屋またはその土地。
        2) 被相続人の居住用家屋の除却後に置けりその敷地の譲渡。
          ※ 建物については 耐震の要件を満たしていなければ満たすように改修必用。
          ※ 家屋については 相続開始直前まで被相続人の居住の用に供されかつ
            被相続人以外に居住していないこと。
  ③ 譲渡時期  相続開始以後3年を経過する日の属する年の12月31日まで(H28.4.1からH31.12.31までの譲渡)
  ④ 譲渡金額 1億円以内
  
   ※ 相続税の取得費加算とは選択適用

  土地家屋を譲渡しようと思えば家屋の改修費用やがかかり 土地等を更地にして譲渡しようとすれば除却費用がかかり‥‥

  相続税の基礎控除額が下がり 相続財産の大半が土地・屋敷で相続税を納付しなければならず 納税資金をどう工面しようかという相談も多く聞きます。
 そんな方には あまり縁のない規定かなとも思いますが 生前に改修工事を行って云々 とか 相続対策としての選択肢にはなりえますよね。


相続対策って何をするの (?_?)

巷の情報では こうすれば相続税の納付を抑えれます的なものが多いようですね。

確かに相続税対策も重要なことですが、いつかは起こるであろう相続は 3つの視点が必要だと思います。

1つ目は どの財産をだれに相続させるかという視点。

これには 両親が2人とも健在なら片親がなくなったときにはいつかはわかりませんが将来必ずもう一度相続(2次相続って言います。) がおきるわけですから  2次相続も含めた遺産の分割を考える必要があります。

次は 納税資金の視点です。
納税用に現預金を残していくだけでなく アパートなどのお金を生む資産があるのならその資産を移転する方法として 相続、贈与、譲渡などシュミレーションしてどの方法が長い目で見て総合的によいかを見極めるということです。

最後は 相続税対策です。
誰にどの財産が行くかによって 原則的な相続税の評価額から減額できる規定が使えたり使えなかったりします。
これも どのように財産を分割すれば相続税がどうなるかシュミレーションすることが大切になります。

相続対策は こういった視点で複合的にしなければ意味がないと思います。

その中で私が重要と考える視点は 残された人の人生を考えることだと考えます。 だから私は どの財産をだれに相続させるかという視点をまずあげたのです。