平成28年度税制改正の項目に 『 減価償却制度の見直し。』があります。
平成28年4月1日以後に取得する建物の附属設備および構築物並びに鉱業用の建物の減価償却方法について、定率法が廃止され、 鉱業用を除く建物付属設備および構築物については 定額法。 鉱業用減価償却資産である建物、建物付属設備および構築物については 定額法または生産高比例法を償却方法とする改正です。
近年たびたび減価償却に関する税制改正が行われていますので振り返ってみます。
○ 平成19年度税制改正
償却可能限度額及び残存価額の廃止
従来は取得価額の95%までしか償却できませんでしたが、償却可能限度額及び残存価額が廃止されたことにより、備忘記録として残す簿価1円まで償却できるようになりました。
新たな定率法の導入
従前の定額法償却率の2.5倍に設定された定率法償却率が適用。従前の制度に比べ早い段階で多額の償却を計上することができるようになりました。
○ 平成20年度税制改正
法定耐用年数及び資産区分の見直し
機械及び装置の耐用年数表について日本標準産業分類の中分類を基本とした資産区分の整理が行われ、390区分あったものを55区分にされ、各資産に係る耐用年数が見直されました。 耐用年数は法律ではなく政令に委任されていますからこれに伴う耐用年数省令の別表の改正が行われました。
この改正により 同じ機械御装置であっても業種により耐用年数がことなることとなりました。 例えば同じ機械装置を宿泊業用設備として使うのであれば15年の耐用年数ですが 飲食店業では8年の耐用年数となります。
○平成23年12月税制改正
200%定率法の導入
定率法の償却率が定額法償却率の2.5倍から2倍に引き下げられました。
平成19年度の税制改正は 当初償却額を多くすることで設備投資を促進させようとする意図が見えますし、平成20年度の改正は機械等の使用実態を考慮しようとする意図が見えます。
平成19年度、平成20年度の改正はどちらかといえば経済活動に重きを置いた改正といえます。
平成23年度、平成28年度税制改正は、企業にとっては償却資産購入当初の経費の減少となる改正です。課税の対象をを広く浅くという考えに基づくもので、経済活動より財政支出に重きを置いた改正といえます。
減価償却資産はその購入対価を費用化するものですから年度ごとの費用計上額は変わっても基本的に最終的には備忘価格の1円を残した額が費用化されるのですから当初費用計上額を削減することのさほど大きな意味はないと思うのは私だけでしょうか。
税制改正はその時々の政策により方向性が多く変わるものですが、経済活動と財政収支 どちらか一方に傾くのでなくバランスをとった方向性が必要だと思います。